ここ綴喜郡井手町を流れる玉川の岸部に
浮彫りを施した石造物がある。
巨石の片隅を見上げたところに、
『駒岩』と呼ばれる全長約1.2メートルの‘馬’のレリーフが彫られている。
肢の短い、ずんぐりした体形の古代の馬で
「左り馬」とも呼ばれている。
雨乞いの守り神として、のちに芸能・習い事の神として祀られ、
駕籠に乗って遠方からのお参りがあったそうである。
もとは、玉川の南岸上の山腹にあったが、
昭和28年の大洪水により、上流にある大正池が決壊し
『駒岩』が彫られた巨石も崩壊し押し流され、現在の状態となった。
昭和63年以後の史跡整備により、土砂に埋まっていた部分を
取り除き、ようやく‘馬’の姿が見られるようになった。
この部分のみは無傷であったようである。
クレーンを使っての引き上げも考えられたが、
花崗岩でできているため、崩れてしまえば元も子もないので
そのままの状態で保存された。
康治二年(1145)の『山城國井堤郷旧地全図』によると
その『駒岩』の馬絵が描かれている。
『山城國井堤郷旧地全図』より
井堤郷は、橘氏の壮大な氏寺「井手寺」(井堤寺)があったところで、
この『駒岩』も平安期に遡る石造物であるといえる。
大水害にも耐えた『駒岩』も後世に残したい史跡だが、
現在、新たな橋梁工事によりその姿は陰に隠れ、危ぶまれている。
神足の六地蔵