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Channel: 彫物名鑑 小松堂
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小松源助を視る ~究極への挑戦

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小松源助は、雁屋の世話人さんから高度な依頼を引き受けたうえ、彫物師の
意地にもかけて、彫物を極上に仕上げると言い切った。
彫物で名高く評価されている北條北ノ町地車を観たとき、この彫物に
強い印象を受けたのに違いない。
イメージ 1
北條北ノ町地車の‘鷲と猿’
非常にしなやかで繊細な彫で、しかもお猿さんが、拾い救ってくれた鷲を
拝んでいるポーズをとっている。

‘拝み猿’のポーズは、大道地車(太子町)や江ノ口北地車で見られるが、
イメージ 2
大道地車(太子町)

イメージ 3
江ノ口北地車
北ノ町のようにここまで刻みのあるものは、ひとつとして類を見なし、
また北ノ町地車の中で唯一の彫物と言っても過言ではない。

この強い印象を受けた源助は、雁屋の彫物に反映させた。
イメージ 4
雁屋地車 (T氏撮影)
いつものぶ厚い冠羽のある鷹の彫にせず、あえてこの北ノ町の彫のような
鷲を刻んだわけである。

改めてこの彫を観ると、他の部分の彫物よりも一段と磨きがかかった彫に観える。
これ以後小松源助は、この鷲を施すことはなかった。

そして小松源助は、弟子たちと期日までに着々と彫物を完成させたが、
ここで意外な彫物変更を行った。
小松源助は彫物製作途中、小膝を叩いてはたと思った。
「このままでは、北ノ町と見比べてあまり変り映えしない・・・」と、
そこで、つぎの彫物図案を考え出した。

イメージ 5イメージ 6









正面左右の木鼻を迎え龍の彫物に変更することにより、
より一層見ごたえのある地車になると。
これは定約書の彫物仕様にないことである。

「これならきっと北ノ町をしのぎ、見違えるものになると・・・」

イメージ 7

イメージ 8
(T氏撮影)

イメージ 9
(K氏提供)

イメージ 10
(T氏撮影)

イメージ 11
懸魚の鳳凰の裏側も丁寧に彫られ、手の抜いたところがない! (K氏撮影)

完成後、手の抜いたところがひとつも見当たらず、まさに極上仕上げに至った。
お披露目のとき、彫物を変更したのにもかかわらず、何の苦情も出ず、
しかも歓声の渦に巻き込まれるほどの賑わいであったそうな!

小松源助にとって雁屋地車は、極みに懸けた彫への挑戦であった。

おわり

[以上の文面はフィクションであり、雁屋および小松源助の真実とは、何の関係もありません]


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