今から28年くらい前、地車彫物研究家W氏に、この写真を見せたところ、
「これは西岡又兵が凛々しく彫ったものだ!」と言った。
そのころ私自身、西岡又兵衛の彫がどのようなものであるか
無知であるためすんなり聞き入れていた。
これらの彫物は、一昨年解体された地車の泥幕部である。
高欄部の上に三枚板と隅障子にも武者が彫られているが、
泥幕部と彫師が異なることが判る。
三枚板部
W氏が参考とした、どの彫物を観てそう言ったのかはわからないが、
ほぼ最近それが見えてきた。
イメージとして、奈良にある現役の住吉大佐の地車、
この彫物にやや相当する。
この現役の地車には、多くの西岡又兵衛の作が見られる。
西岡又兵衛といっても小松源助と同様に、何人名のっていたかはわからないが、
この又兵衛は、ほぼ江戸末期から明治初期に相当する。
もう一つ、解体された地車の花台に西岡又兵衛の銘が刻まれている。
当初、又兵衛の作はこの花台のみと思われていた。
この唐獅子と同等の彫が、奈良に存在する。
奈良の神社に奉納されている、もと三枚板の彫物が衝立化したもの
解体された奈良の地車(住吉型)
また、一昨年解体された花戸口の唐獅子も
又兵衛の彫(ちょい彫)である。
W氏が言った凛々しい表情が、彫の素描写として入っていたのであろう。