獏は、もっぱら木鼻の絵様として彫られることが多い。
もともと寺院建築などの絵様木鼻は、象鼻が主流であったが、
お釈迦さまのイメージが強く、もう少し華麗な獏に取って替わったと考えられる。
蟇股の枠取りした彫物に獏の彫刻はたまに見られるが、
ほぼ丸彫りの彫刻は数少なく思われる。
これは寺院のものであるが、これ以外のものに出逢ったことはない。
さて、だんじりにも木鼻以外に‘獏’が彫られる。
以下、これらはすべてだんじりの枡合に彫られたものである。
一点を除きすべて明治以前の作成であり、
かっての枡合彫刻には‘麒麟’と‘獏’がよく彫られていた。
唐獅子の彫刻は、もっぱら‘子落とし’などで使われるため、
枡合に彫られることが少なかったと思われる。
また麒麟と獏のスタイルはやや似ているので、
江戸末期あたりから、獏よりは‘唐獅子’の彫刻に取って換えらと考えられる。